春のかおり

春のかおり

この喜ばしい、美しいかおりを

すべて、どこか、あなたの知らないどこかに、閉じ込めてしまって

私だけのものにしたいけれど

私だけのものにしたなら

どうも、もったいないから

道ゆくあなたへ、分けてあげようと思う

春のかおり

決まった時に、必ずやってくる、このかおりを

言葉や、何かに、書きとめて

忘れたくないけれど

きっとまた、私は、すっかり忘れてしまうから

道ゆくあなたよ、少しでもいいから、忘れずに覚えておいてほしい

道ゆくあなたへ

このすばらしい、春の香りを、私はきっと忘れてしまう

なぜなら、この春の香りは、佇むことなど、知らないから

けれども、春の香りは、それでも、また、私のところにやってくること

どうか、そのときまで、覚えておいてほしい